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トピックス:加齢黄斑変性症

加齢黄斑変性症の最新治療(抗VEGF抗体を中心に)

 
加齢黄斑変性症とは

はじめに
 
1) 眼球の構造 
眼球に入った光は角膜、水晶体、硝子体を通って網膜の上に像を結びます。その情報は視神経を通じて脳に伝えられ、映像として認識されます。
 
2) 黄斑とは 
目の内側の組織であり、カメラのフィルムに相当する網膜のほぼ中心に位置する黄斑には、ものを見るために重要な視細胞が集中しています。(図1参照)
 
3) 加齢黄斑変性症(Age-related macular degeneration: AMD)の病態
黄斑の組織の細胞が萎縮したり、黄斑部の下側に異常な新生血管が発生して出血を起こしたり滲出物が貯まったりすると、視界の中心の一番見たいところが、見えづらくなってしまいます。
加齢黄斑変性は黄斑部の機能が、加齢などの原因によって障害される疾患です。脈絡膜から発生する新生血管(脈絡膜新生血管)の有無によって滲出型と萎縮型に分類されます。新生血管は正常の血管と異なりもろく破れやすいので、出血を起こしたり血管中の成分がもれたりして急激な視力低下の原因となります。
 
3)-1 滲出型加齢黄斑変性
新生血管型、ウエットタイプとも呼ばれます。脈絡膜新生血管が発生し出血することで網膜が障害されて起こります。進行が速く、急激に視力が低下します。(図2参照)
 
3)-2 萎縮型加齢黄斑変性症
非滲出型、ドライタイプとも呼ばれます。網膜の細胞が加齢により変性し、その結果網膜がだんだんと萎縮して行きます。進行が緩やかなため気づかない人もいます。しかし時間の経過と供に新生血管が生じ滲出型に移行する場合もあり、定期的な眼科検査を受ける必要があります。(図3参照)予防として生活習慣改善があげられ、またルテイン等のサプリメント服用で効果があるという報告もあります。
 
最近はわが国でも、特に新生血管を生じるタイプの加齢黄斑変性の患者さんが増えてきています。
現時点では、新生血管の生じるタイプの加齢黄斑変性が治療の対象となります。新生血管の位置によって、治療法の選択肢が変わります。
黄斑部のもっとも大事な部分である中心窩から新生血管が離れていれば、糖尿病網膜症の治療などに使われるレーザー光凝固術(図4参照)という方法を用いて、新生血管を凝固します。
 
さらに手術により新生血管を抜去するという方法(図5参照)もありますが、中心窩に近いと、これらの治療は正常な網膜組織を障害することもありますので、行うことができません。
 
その他、黄斑移動術(図6参照)という手術、経瞳孔温熱療法という特殊なレーザーを使っての治療(図7参照)が考えられますが、適応となる患者さんの数は限られています。
 

加齢黄斑変性症の治療について

 
・抗VEGF薬療法
中心窩の下に新生血管がある患者さんに対し、新生血管の発育を促進させる血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endthelial growth factor)の活性を抑制する薬剤を硝子体内に注射して新生血管の活動性を抑止する治療法です。当科では外来手術で水曜日と金曜日に手術室で硝子体内注射を行っております。基本的に病気の進行を抑制し、さらなる視力低下を抑制することが目的になります。効果はすぐにはあらわれず、複数回の治療を行いながら外来にて経過観察する必要があります。数種あるVEGFの中でVEGF−A、VEGF−B、他にもPlGF(胎盤成長因子)等が病的な関わりが強いものとして眼内に存在します。ルセンティス(ラニベズマブ)はVEGF-Aを、アイリーア(アフリベルセプト)はVEGF-A、VEGF-B、PlGFの働きを選択的に抑制することで新生血管の成長やそこから漏れ出る血液中の水分を減らす薬剤として認可され、当院でも用いております。
 
■治療に際しての注意
1)ルセンティス(ラニベズマブ)、アイリーア(アフリベルセプト)両剤とも、基本的に4週間に1回、外来で検査しながら連続3回投与します。その後定期的に検査しながら症状に応じて計画的に投与したり再投与間隔を適宜調整する場合があります。尚、使用する薬剤は患者の状態にあわせて選択いたします。
2)投薬治療前後は眼内炎・感染症を防ぐために抗菌薬を点眼いただきます。また、洗顔、入浴、洗髪については担当医の指示に従っていただきます。
高血圧症、緑内障や高眼圧症、脳卒中又は一過性脳虚血発作の既往歴等のある患者は投与について注意事項があり、診察時に詳細を説明させていただきます。
3)3) ルセンティス(ラニベズマブ)は1瓶181,270円、アイリーア(アフリベルセプト)は1瓶163,840円です。
治療は保険の適応となっておりますが、保険の種類、年齢などによって支払う値段が異なりますので受診時にお尋ねください。
高額療養費制度を活用できる可能性もありますので病院の窓口、ご加入の健保組合にもお問い合わせください。
 
・光線力学的療法
中心窩の下に新生血管がある患者さんに対し、光線力学的療法(Photoidynamic theraphy: PDT)という治療も行われています。これは「光感受性物質」(ビスダイン、静注用15mg)を静脈注射で体内に投与しておいて、この薬剤が新生血管に集まった時期に網膜に障害をきたさない程度の弱いレーザー光線をあてるというものです。欧米での臨床試験の結果、この治療を行った患者さんのほうが、行わない患者さんと比べて視力低下の程度が少ないことが証明され広まった治療法です。全ての方に有効なわけではありません。複数回の再治療が必要な場合もありますし、すでに黄斑部の網膜そのものの機能が不良となっている場合には、本治療を行っても視力の改善は期待しにくいです。現在では抗VEGF薬治療法がより合併症が少なく同等以上の効果があると報告されておりますが、抗VEGF薬治療法と併用することでさらに効果がある場合もあるため、病状に応じて治療を行います。光線力学的療法は、本治療法の認定医のみが施行することができますが、当院では複数の認定医が診断、治療を行っています。
 
■治療に際しての注意
1)以前は初回の治療は入院となりましたが、現在は初回から外来治療が受けられます。
2)治療に用いる光感受性物質が体内に残っている間は、日光に当たることを避けていただきます。また外出時はサングラス、帽子、手袋などを携行していただきます。
3)1回の治療で新生血管が退縮していなければ、3ヵ月後に再治療を行います。
4)この治療は保険の適応となっておりますが数千円から10万円前後の自己負担が生じます。保険の種類、年齢などによって異なりますので受診時にお尋ね下さい。
 

参考:滲出性黄斑変性症の自覚症状について

 
1) 初期症状 変視症 見たい部分がゆがんで見えます。
 
2) 進行期の症状 
(ア)視力低下 
(イ)コントラスト感度の低下。
(ウ) 中心暗点 見たい部分が見えないです。
 
3)自覚症状の簡単なチェック法
図のような格子状の表をみて片目ずつ見え方を確認してください。その際表の中央の白い点をみてください。(アムスラーチャートの図)



下図のような症状がありましたら、加齢性黄斑変性の疑いがありますので、速やかに眼科医に相談してください。
線がぼやけて薄暗く見える。 中心がゆがんで見える。 部分的に欠けて見える。
 
最後に

治療の適応、可能性もしくは精査の希望がある患者様がおられましたら、当院外来(担当、月曜日/丸岡真治、火曜日/上田哲生、木曜日/緒方奈保子)電話番号:0744-22-3051(内線3333)まで連絡下さい。